ご挨拶


ビタミンE研究会は1989年よりエーザイ(株)の共催により開始され、わが国のビタミンE研究のリーダー的役割を果たしてきました。さらに、海外からの本分野における著明な研究者に来日していただき、最新情報の提供の場となってきました。そのなかで、脂質過酸化ラジカルの抑制の基づく抗酸化作用がビタミンEの主な作用機構 として解明されてきた歴史があります。さらに、2000年以降、”beyond antioxidant”作用としての活性にも注目 が集まり、ゲノム解析の進歩も重なり、その炎症抑制、抗動脈硬化、細胞組織保護作用などが明らかにされて きました。さらに、ビタミンE同族体としてトコフェロールだけでなくトコトリエノールに関する研究成果も多く発表さ れ、本会においても議論されてきました。臨床的には、ビタミンEの疾病予防効果に対して否定的な、特にメタ解 析結果では否定的な報告がなされ、話題が提供されてきました。しかし、個人の遺伝的素因(SNPに代表とされ る遺伝子多型)により薬剤治療を考慮するファーマコゲノミクスは、次第に栄養学、ビタミン学にも応用されるよう になり、ビタミンEの抗動脈硬化作用にハプトグロビンSNPが関与することが解明された点は、近年の最も大きな ブレイクスルーではないかと考えます。本会はこのビタミンE研究の時代時代にあった多くの成果を議論してきた 歴史があります。ますますの発展を期待したいものです。

 

ビタミンE研究会代表幹事

吉川敏一